予約のケーキを、お客様が取りに来なかった。連絡もつかない。その代金は請求できるのか。結論から言うと、名前入りのオーダーケーキのように作り終えてしまったものは、その代金を請求できる考え方があります。ただ、実際に払ってもらえるかは別の話で、いちばん効くのは「次から起きにくい受け方」に変えることです。
誕生日の朝に仕上げたケーキが、閉店まで冷蔵ショーケースの奥に残っている。名前のプレートが付いているので、ほかのお客様にお出しすることもできない。ケーキ屋さんのオーナーの方とお話ししていると、こうした日の話を伺うことがあります。
この記事では、無断キャンセルの代金を請求するときの考え方を、国の資料と法律の条文をもとに整理し、請求の連絡をするときの例文と、次から防ぐための準備をまとめます。私は法律の専門家ではありません。実際に請求の手続きを進めるときは、弁護士などの専門家にご相談ください。
この記事の結論
この記事の内容
無断キャンセルの代金は請求できる?国の資料での考え方

飲食店の無断キャンセルについては、経済産業省が2018年11月に「No show(飲食店における無断キャンセル)対策レポート」をまとめています。無断キャンセルによる飲食店の損害は、推計で年間約2,000億円とされました(出典:経済産業省「No show(飲食店における無断キャンセル)対策レポートが発表!」)。
このレポートでは、無断キャンセルをしたお客様に対して、お店はキャンセル料を請求できるという考え方が整理されています。目安は予約の中身で変わり、コース料理の予約ならコース代金の全額、席だけの予約なら平均客単価をもとにする、というものです。
ケーキの予約に当てはめると、考え方の分かれ目は「そのケーキを、もう作り終えているか」です。
ケーキの予約に当てはめた場合の目安
| 予約の中身 | 損害の考え方 |
|---|---|
| 名前入り・デザインのオーダーケーキ | ほかのお客様に出せない。コース料理に近く、ケーキの代金が目安になりやすい |
| 店頭にも並ぶ定番のホールケーキ | その日のうちに売れれば損害は小さい。売れ残った分が損害になる |
| まだ作り始めていない予約 | 取り置いた材料や断った注文がなければ、損害は小さい |
表はあくまで考え方の目安で、実際にいくら請求できるかは、注文のときに何を伝えていたか、どのくらい前のキャンセルかなど、個別の事情で変わります。とはいえ、「作り終えていて、ほかに回せないもの」ほど、請求の根拠ははっきりする、という順番は覚えておいて損はありません。
キャンセル料の決まりを作るときの上限
「前日以降のキャンセルは100%いただきます」のように、お店でキャンセル料の決まりを作っておくことはできます。ただし、お客様との約束には消費者契約法が関わり、決まりの金額には上限があります。
消費者契約法の第9条では、キャンセルに伴うキャンセル料の決まりは、同じような契約のキャンセルでお店に通常生じる「平均的な損害」を超える部分が無効になるとされています。決まりに書いた金額がそのまま認められるわけではなく、超えた分は払ってもらえない、ということです。同じ条文では、お客様から求められたときは、キャンセル料をどう決めたのか、その根拠の概要を説明するよう努めることも定められています(出典:e-Gov法令検索「消費者契約法」第9条)。
ケーキ屋さんの場合、説明しやすいのは「作業の進み具合」で決まりを分ける形です。たとえば、次のような分け方が考えられます。
キャンセル料の決まりの例(オーダーケーキの場合)
| キャンセルの連絡 | お店の状態と、決まりの例 |
|---|---|
| 予約の締切より前 | まだ何も始めていない。キャンセル料はいただかない |
| 締切のあと〜前日 | 材料の取り置き・プレートや飾りの準備が始まっている。使った分をいただく |
| 当日・連絡なし | 仕上げ終わっている。ケーキの代金をいただく |
「なぜこの金額なのか」をお店の作業で説明できる決まりにしておくと、平均的な損害を超えにくく、お客様にも伝わりやすくなります。何日前を締切にするかは、お店の仕込みの段取りで決まります。予約の締切の考え方はケーキ屋さんの予約システム比較の中でも触れています。
請求の連絡のしかたと例文

受け取りの時間を過ぎてもいらっしゃらないとき、すぐに「無断キャンセル」と決めつけないほうがいい場面があります。日にちの勘違い、急な体調不良、家族の用事。ケーキ屋さんのオーナーの方からは「たまにおるな、忘れてたって。びっくりするんですよ」という話も伺いました。最初の連絡は、請求ではなく「確認」から始めるのがおすすめです。
連絡の順番
| いつ | すること |
|---|---|
| 受け取り時間から30分ほど | 電話で「ご予約のケーキをお預かりしています」と確認する |
| 電話がつながらないとき | メールやショートメッセージで、閉店時間までお預かりすることを伝える |
| 翌日以降も連絡がないとき | 注文のときに伝えた決まりにそって、代金のお支払いをお願いする |
当日、電話がつながらなかったときに送る確認の例文です。
〇〇様
本日〇時にお受け取りのご予約をいただいていた、〇〇(店名)です。
ご予約のケーキ(5号・お誕生日プレート付き)をお預かりしております。本日は〇時まで営業しておりますので、ご都合のよい時間にお越しください。
お越しが難しい場合は、お手数ですがこちらのお電話(000-0000-0000)かメールにご連絡いただけますと助かります。
翌日以降も連絡がないときに、代金のお支払いをお願いする例文です。注文のときにキャンセルの決まりを伝えていたことを、必ず書き添えます。
〇〇様
〇〇(店名)です。〇月〇日にお受け取りのご予約をいただいていたケーキについて、ご連絡いたします。
当日はご来店がなく、お電話とメールでもご連絡がつかない状態でした。ご予約のケーキはお名前のプレート付きでお作りしており、ほかのお客様にお出しすることができませんでした。
ご注文の際にお伝えしておりましたとおり、当日のキャンセルはケーキの代金(〇,〇〇〇円)をいただいております。お手数ですが、〇月〇日までに、店頭または下記の方法でお支払いをお願いいたします。
(お支払い方法)
ご事情がおありでしたら、お気軽にご連絡ください。
文面で気をつけたいのは、お客様を責める言葉を入れないことです。「無断キャンセル」「非常識」といった言葉は使わず、何が起きたか・なぜその金額か・どう払えばいいかの3つだけを淡々と書きます。最後の「ご事情がおありでしたら」の一文があると、お客様が連絡しやすくなります。予約を受けたときに送る確認のメールの書き方は、予約確定メールの書き方と、届かない・迷惑メールに入る原因に例文つきでまとめています。
請求しても、戻らないことが多い理由
請求できる考え方がある、ということと、実際にお金が戻ってくることは別です。ケーキの予約で請求が難しくなる理由は、だいたい次の3つです。
1つめは、連絡先が電話番号だけのことが多いことです。電話がつながらなければ、それ以上の手段がありません。2つめは、金額が数千円であること。払ってもらえないからといって、手続きに時間とお金をかけるのは割に合わないことがほとんどです。3つめは、お店の手が足りないことです。仕込みと接客の合間に、何度も連絡を取る余裕はありません。
それに、地域のお客様が中心のケーキ屋さんにとって、請求のやり取りは気持ちの負担も大きいものです。だからこそ、起きてから請求するより、起きにくい受け方に先に変えておくほうが、お店にとってずっと楽になります。
ある導入店のオーナー様は、受け取りに来なかったお客様はこれまで一人もいなかったのに、予約の仕組みを入れるときに前払いの形を選ばれました。「来なかった、お客様が取りに来なかったとかはないんですけれども…事前決済にした方がいいんじゃないか」。痛い目にあってから考えるのではなく、先に備えておく判断でした。
次から防ぐ4つの準備

経済産業省のレポートでは、お店側の対策として、予約の再確認、キャンセルの連絡をしやすくすること、キャンセルの決まりをはっきり示すこと、事前決済や預り金の導入の4つが挙げられています。ケーキの予約に置きかえると、次のようになります。
1.規定を示す。注文を受けるときに「前日以降のキャンセルは〇%」と、口頭だけでなく紙やメールで残る形で伝えます。決まりを知らなかった、と言われないためです。
2.連絡先を渡す。取り消したいときにどこへ連絡すればいいか、お客様の手元に残る形で伝えます。来られなくなったお客様の多くは、連絡しづらくて黙ってしまいます。連絡しやすいほど、無断キャンセルは「ただのキャンセル」に変わります。
3.前日に確認する。受け取りの前日に「明日〇時にお待ちしています」とひと言送るだけで、日にちの勘違いはかなり防げます。電話でもメッセージでも構いません。
4.先に払ってもらう。予約のときに代金をいただいておく形です。4つの中でいちばん効き目がはっきりしていて、請求の連絡そのものが要らなくなります。
1〜3は今日からでも始められます。4の事前決済は仕組みが要りますが、実はお客様の側から求められていることでもあります。面談でお話を伺ったお店では、若いお客様から「お金払いに行かなきゃ予約取れませんか」と聞かれることが多い、とのことでした。
事前決済にすると、何が変わるか

予約のときに代金を払ってもらう形にすると、お店とお客様の両方にとって変わることがあります。
事前決済の前と後
| 場面 | 事前決済にすると |
|---|---|
| 来なかったとき | 代金はいただいているので、請求の連絡が要らない |
| お客様の気持ち | 払った分「行かなきゃ」と覚えていてもらいやすい |
| 受け取りのとき | お会計がないので、お渡しが早く済む |
私たちが運営しているケーキ店専用 店頭受取予約+AI販促プラットフォーム「いつでもケーキ」では、お客様がスマホで予約するときに、そのまま代金を払えます。いつでもケーキの予約の約51%は、お店の営業時間外に入っています。夜にケーキを選んだお客様が、その場で支払いまで済ませる。お店は朝、支払い済みの予約を確認して作り始める、という流れです。料金は1件ごとのプラットフォーム利用料5.5%+決済手数料3.6%で、初期費用と月額は0円です。
事前決済を入れるときに気をつけたいのは、キャンセルの決まりを予約のページに書いておくことです。先に払ってもらう分、「いつまでなら返金されるのか」をお客様が分かる形にしておくと、安心して予約してもらえます。予約の受け方を電話から少しずつ移していく考え方は、誕生日ケーキの予約管理でミスを防ぐ方法にまとめています。
まとめ
無断キャンセルの代金は、作り終えたオーダーケーキなら請求できる考え方があります。ただしキャンセル料の決まりは「平均的な損害」が上限で、実際に払ってもらえるかは別です。請求の連絡は、確認から始めて、責める言葉を使わずに書きます。
そして何より、起きてから追いかけるより、決まりを示す・連絡先を渡す・前日に確認・先に払うの4つで、起きにくい受け方にしておくこと。仕上げたケーキが、ちゃんとお客様の手に渡る。そのための準備です。
よくある質問
Q. 無断キャンセルの代金は、どこまで請求できますか?
名前入りのオーダーケーキのように作り終えてほかのお客様に出せないものは、ケーキの代金を目安に請求できる考え方があります。ただし、お店で決めたキャンセル料のうち、同じようなキャンセルで通常生じる「平均的な損害」を超える部分は、消費者契約法第9条で無効になります。実際の金額は注文時に伝えた内容などで変わるため、手続きを進めるときは専門家にご相談ください。
Q. キャンセル料の決まりは、どうやって伝えればいいですか?
注文を受けるときに、口頭だけでなく、注文票の控えや確認のメール、予約ページなど、お客様の手元に残る形で伝えます。「締切より前は無料、締切後〜前日は使った材料の分、当日はケーキの代金」のように、お店の作業の進み具合で分けておくと、金額の理由を説明しやすくなります。
Q. 事前決済にすると、予約が減りませんか?
お店のお客様の層によって変わります。ただ、若いお客様からは「お金を払いに行かないと予約できないのですか」と聞かれることが多い、というお店もあり、先に払える形を求める声もあります。キャンセルの決まりを予約ページに書いておくと、安心して予約してもらいやすくなります。
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